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『真田丸』第4回『挑戦』感想(ネタバレ有)

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このブログを開設したての頃に書いた記憶がありますが、本能寺の変と竜馬暗殺は日本史好きの誰もが一家言持っている事件です。共に実行犯は判然としているにも拘わらず、黒幕は誰彼という説が無数に唱えられている。これ、実は意外なことで、例えば紀尾井坂の変も似たようなシチュエーションなのに、黒幕の存在を唱える人間は少ないですね。大久保の横死で政治面での長閥の勢力拡大が著しくなった結果から逆算して、伊藤や山縣の差し金と主張する人がいてもおかしくないのですが、せいぜい、実行犯が志々雄一派であったというネタ話が取り沙汰される程度です。政治的業績で大久保は竜馬の遥かに凌駕する存在であり、信長と比べても日本史における重要度は遜色ないと思うのですが、まぁ、これは単純に人気の問題なのかも知れません。或いは信長や竜馬が死ななかったら……という歴史のifを語る楽しみに繋がっているのかも。
私が支持する本能寺の真相は極めて数学的で、信長という人物は家督を継いで以降、平均して二年に一度のペースで部下の謀叛や同盟者の背信や暗殺未遂事件に見舞われているんですね。確率論でいうと信長は丁の目が出たら死ぬサイコロを一年おきに振っていたワケで、本能寺で死ななくても、何れは横死する運命であったと思います。その出目がたまたま、光秀の謀叛の時であったという話。荒木や松永とは単純に謀叛を起こした順番が違っていたに過ぎません。そもそも、上記のように部下や盟友に何度も裏切られているのにも拘わらず、詰めと処罰が甘々なんですよね、信長。第六天魔王とかいう御大層な綽名の割に、実は同時代人には結構舐められていたと思います。
相変わらず、前置きが長くなりましたが、詰まるところ、本能寺の変は如何なる説に基く描写を心掛けようとも、万人を納得させるのは不可能ということ。その点、今回の本能寺の変が敢えて小難しい理屈を唱えずに、真田一族から見た信長の存在と横死の衝撃を描くことに徹していたのは、或いは上記のような考えから発していたのではないかと思いました。いや、本当によかったよ。出番も台詞も殆どなかったけれども、それが逆に信長の存在感を増していました。

織田信長「真田安房守か……よき面構えじゃ」

の一言で去っていくシーンとか最高じゃん。ペラペラペラペラと聞いてもいないことをフレンドリーにくっちゃべる信長ではダメ。何を考えているか見当がつかない、機嫌を損ねたら何をされるか判らない相手であるからこそ、昌幸が知恵のかぎりを尽くし、死に物狂いで手に入れた領土を明け渡してでも、臣従という選択をしたもやむなしと思える。基本、三谷さんの作品は昌幸と家康の遣り取りや松さんの人質志願の件からも判るように、質の軽さを口八丁手八丁で補うことが多いのですが、今回の信長は重量感あったよ。一方でキンカンをランカンに叩きつけるシーンは蛇足というか……信繁が悪夢に魘される前フリでしょうし、もしかすると、次回で何らかのフォローが入るかもですが、ここ、別になくてもよかったような……寧ろ、上記の場面しか出番がないほうが視聴者に鮮烈な印象が残ったのではないでしょうか。ここが今回数少ない減点シーン。もう一つの減点シーンはラストで信繁が悪夢に魘されて撥ね起きる場面。あれ、本能寺の変の当日という設定ですが、あの夜は新月なんだよなぁ。

逆にいうと他の部分は概ね満足でした。今回も録画実況しながらの鑑賞でしたが、途中から実況するのも忘れて見入ってしまいました。久しぶりに大河ドラマを見たという心境。何よりも昌幸VS家康のシーンがよかった。

徳川家康「真田☆自演乙☆源五郎wwwコピペと複垢でフォロワーを水増しする意地汚さに草生えるwww(超意訳
真田昌幸「ネタにマジレスカコワルイwww三方ヶ原の焼味噌野郎は半年ROMってろwww(超意訳


という丁々発止の遣り取り。特に今まではコメディリリーフがメインの家康が、今回は昌幸の計略を見破っていたのみならず、直江兼続の名前を持ち出しての揺さぶりをかけるという狸っぷり。これ、実際にはかねたんなんか来てないのに、アドリブとハッタリで昌幸の反応を窺ったと見るほうがシックリきます。そのアドリブに乗っかった信忠も只者じゃありません。そして、その程度のハッタリに折れるタマではないと見るや、信長との取次を計らうことで真田に恩を売る。家康超カッコいい。こんなにカッコいい家康を見るのは久しぶりだ。内野さんの家康はシリアスモードが似合うので、あんまり、コメディに傾いて欲しくないなぁ。
一方で上記した松さんの人質志願の件はコメディタッチで笑えました。如何に下心があるとはいえ、喜々として人質になりたがる女性は近年の大河では稀ですね。『清須会議』のコメディシーンは三法師をあやそうとする官兵衛以外は漏れなく滑っていたのも、今年の大河を不安視する要因でしたが、ここは純粋に可笑しかった。本心を隠してカッコつけようとする人間が泥沼に嵌り込んでいくのも三谷さんの作風です。人質とは当時は普通のことであり、それでビービーと泣き喚くのはおかしいという価値観を基本にしつつも、実は単に夫とラブラブしたいだけという捻くれた設定が凄ぇ。子供を人質に出すとか出さないとかで一話まるまる御涙頂戴の三文芝居をやらかした『ぼんくら官兵衛』へのアテツケなのは確定的に明らか。このシーン、もっと転がして欲しかった。
勿論、計略やコメディばかりではなく、臣従を許された代償に沼田と岩櫃をボッシュートされてしまうという、小勢力ゆえの悲哀もキチンと描かれていましたが、これも、男同士&大人同士の会話に留めているのがいい。女性や息子たちには『これが一番よい選択なのだ』と明るい話題に留める優しさがあるからこそ、矢沢頼綱に頭を下げる昌幸の無念が伝わるのですよ。そして、この無念があるからこそ、今後の昌幸がお兄ちゃんの寿命をガシガシ削る決断を下し続けても、視聴者は感情移入できるのではないかと予想します。そのお兄ちゃんは先回出番が多かった分、今回は見せ場控えめ。まぁ、お兄ちゃんの見せ場は寿命が削られるシーンとほぼ同義語なので、或いはいいことなのかも知れません。でも、信繁と松さんの計画もワザと知らないフリをして賛同した可能性がありますので、やはり、若干寿命が縮んだのかも。残りの寿命は百四十年くらいか。お兄ちゃんが昌幸の名代として信長に馬を献上するシーンがありましたが、信繁がいったように、この馬に松さんが乗って帰ってくるという展開にジョースターさんの魂を全部賭けます。

尚、出浦さん家には鬼武蔵が来る模様。

『おお、もう……』と天を仰ぐしかない話ですが、何気にうまくやるので心配いりません。JE市民としては、もっと盛大に鬼武蔵の足を引っ張ってくれないと、隣の市が焼き討ちの憂き目に遭うので複雑な心境です。本能寺の変がなかったら、ガチでJE市は鬼武蔵の所領になっていたかも。歴史のifは様々な場面に転がっているものです。こちらは本能寺や竜馬暗殺と異なり、あまり考えたくないifですが。


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