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荒川弘版『アルスラーン戦記』第30章『蛇王の影』感想(ネタバレ有)

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「佇む青年の筆がもたらす未来を、無垢な笑顔はまだ知らない!」(扉絵アオリ)

荒川センセか編集さんか知りませんが、このアオリを考えた人は少なく見積もっても天才。このあとどうなったのかが気になって、夜もぐっすり眠れません。アルザングの兇刃を返り討ちにしたナルサスですが、完成した画を見せたら、アルフリードに殺されそうです。アルフリードはシンドゥラ遠征の頃には『ナルサスに私を描いて貰いたい』といっており、ギランでの海賊退治では『ナルサスの画の力で海賊を自白させることができた』という贔屓の引き倒しをやっていたので、扉絵のシチュエーションは原作3巻~6巻の間の出来事でしょう。ちょっと未来を先取りしたであろう扉絵で始まった今年最後の『アル戦』のポイントは3つ。


1.地行術

アルザング(まず、ナルサスからやるか……小娘はそのあとゆっくりと……)

どう見ても死亡フラグです。本当にありがとうございました。
結果論に過ぎませんが、アルザングはアルフリードに攻撃を集中して、ナルサスが救出に飛び出さざるを得ない状況に追い込んだほうがよかったと思います。アルフリードにかまけている間にナルサスを取り逃がすと考えたのかも知れませんが、如何に大陸行路で一番性格と美的センスが悪い男とはいえ、ナルサスは危機に陥った少女を見捨てる類の人間ではありません。自分がナルサスの立場であれば、アルフリードを見捨てると判断したことがアルザングの敗因でしょう。『そのあとゆっくり』という下卑た呟きもそうですが、ゲスい為人と欲望が勝機を逃すという典型的な負けフラグでした。
さて、何気に『アル戦』でも屈指の名バトルとして知られるナルサスVSアルザング。バトルというと無条件にダリューンがあげられがちですが、アイツは強過ぎる所為か、意外と名勝負にならない闘いが多いのよね。ダリューンが苦戦したのはバハードゥルの時くらいでしょうか。地中から来るアルザングを油と火で迎撃するのは、原作読んでいた時も思わず唸ってしまいました。こちらから位置を把握できない地中からの攻撃には範囲系のスキルが有効。ンドゥール戦のアブドゥルも偽の足音で誘導するのではなく、パーティー周辺を炎で覆ったほうがよかったのではないでしょうか。ポルナレフのように肝心な時にしか役に立たない男というのも考えものですが、肝心な時に使えないヴ男も大概です。安定したアベレージを出している花京院を見習え。


2.いまだに判らん

アルフリード「鈍いんだねぇ。まだわからないの? ほんとに?」
ナルサス(わかっているがわかりたくない!)


実際問題、ナルサスはアルフリードの何が不満なのでしょうか。働き者で快活な美人とくれば、大抵の男は二つ返事で嫁に迎えるでしょうに……と初めて原作を読んだ頃は疑問に思ったもので、まぁ、年齢を重ねればナルサスの心境も理解できるだろうと踏んでいました……が、現実は往々にして非情。いまでもナルサスがアルフリードの求婚に応えない理由が判りません。これ、私が悪いのか? 一応、理由らしい理由を考えてみると、

①今は色事に現を抜かしている場合ではない
②結婚という言葉に尻込みしている
③正妻のエラムに申し訳ない
④アルフリードを振ったらゾット族の報復が怖い
⑤実はナルサスはアルスラーンを狙っている


この5つになるでしょうか。順当に考えると①②③のブレンドというのが最も妥当なセンだと思いますが、何かビシッとコレと判る回答をお持ちの方がおられましたら、御教授頂けると幸いです。何せ、フレデリカがヤンに好意を抱いていることをシェーンコップにいわれるまで気づかなかったレベルの人間の心が判らない人間なもので、はい。


3.ばかじゃないもん

ザンデ「このザンデ! たとえ、ダリューンのために手足を失おうと、殿下のために奴の脳天を叩き割ってご覧に入れます!」
ヒルメス「うむ、頼もしいな(棒


口では負傷した部下を労わる言葉をかけてやるヒルメスですが、上記のコマで描かれているヒルメスには目玉が描かれていないので、本心からの台詞でないのは明白。流石に『使えねー奴』とまでは思っていないでしょうけれども、手足を失ってもダリューンの脳天を叩き割るという発言に『いや、それは物理的に無理だろ』と心の中で冷静にツッ込んでいる可能性大。これ、原作では『片手片足を失おうとも』なんですよね。『手足』にしたほうがザンデの可愛らしさが伝わると荒川センセが考えたのか、それとも『片手片足』という表現は漫画には生々しくて、講談社的にOUTと判断されたのか、微妙なところです。何れにせよ、細作を使った情報収集に長けている割に、すぐカッカするザンデの存在は、意外とヒルメスにとっては必要不可欠なのかも知れません。ヒルメス本人も結構頭に血がのぼりやすい性質なので、隣にザンデがいることで反面教師になっているのでしょう。今月号のあらすじで、

「ヒルメスに仕える、ちょっとおバカな武将」

と紹介されてしまいましたが、ザンデはバカというよりも残念な子ですね。『おバカ』と『残念な子』の違いには所説あるでしょうが、私的には充分な取柄があるのに、それを台なしにするレベルの欠点がある子のことだと思うので、まさにザンデにうってつけの評価だと思います。『相棒』でいうと陣川君。自分の腹心が陣川君か……そりゃあ、ヒルメスも人材不足を嘆くのも残当ですね。


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