川原正敏センセ、デビュー30周年、おめでとうございます。
今月号と来月号に渡って掲載される記念インタビューが結構面白かった! 年齢を考えると当然のことなんだけれども、川原センセもラブコメをやらないといけなかった80年代の洗礼を受けた、島本和彦センセとかと同世代なんだなぁ。所謂アオイホノオ世代。というか、調べたら島本センセよりも年上でした。何気に意外。島本センセが老成しているのか、川原センセが若いのか。まぁ、あくまでも作品から感じる印象の話ですが。ちなみに若手時代から永くつきあうことになったアシスタントの名前が木村さんだとか。あっ……(察し
今回は第弐門の総括というか、第壱門未見の読者のための解説というか、連載再開後から張られていた謎や秘密の種明かしがメインなので、大きな動きはありませんでしたが、試合がない分、じっくりと堪能できたので逆によかったんじゃないかと。ただし、明日は早くから白い悪魔との格闘が控えているので感想は短め。ポイントは9つある分、個々の項目も短め。
1.え? いいの?
陸奥九十九「抜いてくれるか……針」
龍造寺舞子「うん」
父親が見ているとも知らずにイチャイチャイチャイチャとストロベリっているバカップル一組。九十九の無言の意志を尊重してか、誰にも見えないように胸に刺さった針を抜く舞子。修羅の花嫁としては大正解なのですが、これ、急所に刺さっていた場合はヘタに抜くと一気に血が噴き出して九十九の意志どころか、生命もヤバいんじゃないかと思いました。帯を失くしたマッイイツォといい、九十九はテディサン以外は理性的なセコンドには恵まれないもよう。まぁ、理性的なセコンドが九十九と相性いいワケがないので仕方ないのですが。
2.ちゃっかり
羽生つばさ「あなたが……父?」
龍造寺凛子「え……今、何て?」
羽生社長のお零れに預かる形で山田さんの正体と九十九の出生の秘密をゲットした凛子さん。今回の大会では最も課せられた仕事ができなかったワリに、陣雷の控室にモニター入れさせたり、娘婿(予定)の実父を知ったりと、一番労少なくして得るものが多かったようです。尤も、実況に向かないことが露呈たうえに、飛田も引退したので、今後の大会で実況席に呼ばれることはないでしょう。自宅や道場で試合を見ている時も、以前ほどには重宝がれらないかも知れません。
3.役者
羽生つばさ「彼……いえ、彼らにふさわしいものは、ただ、感嘆、称讃の拍手のみではないでしょうか。どうか、陸奥九十九選手のみならず、姜子牙選手にも心よりの拍手を」
五十嵐利和「」
ホセ・カルネラ「」
谷山編集長「」
ムサい男共が半泣きで叫んでいたことを、アドリブにも拘わらず、過不足ない言葉でサラリといってのけるのが羽生社長の凄味。この人は基本スペック高いわぁ。しかも、これ、全てがホンネじゃないからね。試合に感動したのは確かでしょうけれども、羽生社長の目下の興味は山田さんの告白の内容だからね。それを早く聞きたいがために巧みな言葉でササッと場を収めただけだからね。本音四割、建前六割といったところか。絶対に山田さんは羽生社長と子供をつくるべきだと思うの。冬弥と九十九の父と羽生社長という良血同士の間に生まれた子供……うーん、考えるだに恐ろしい。今度こそ、純粋な不破が陸奥を越えるかも知れんぞ。
4.生死
山田さん「死にましたか」
羽生つばさ「主宰者としては、それは困るので……全力で治療に当たってもらって、なんとか最悪は回避したみたい。後遺症が残るかもしれないけど、リハビリしだいかしらね」
どう考えてもレオンよりもヤバい感じで『四門』を喰らっていた姜子牙ですが、生命は取り留めた模様。レオンよりも軽量なので打撃への防御力も低いうえ、超高速『龍破』&『斗浪』ともいえる『青龍』をマトモに受けて即死しないほうがおかしいと思ってしまいますが、恐らくは医療スタッフが優秀なのでしょう。まぁ、レオンを死なせて一部の読者にボロクソに言われた所為で無期限休載に入ったトラウマで死なせられないのかも知れません。
尚、スウィートルームで男性の隠し子の存在と女性遍歴を肴に酒を酌み交わしている(嘘はいってません)羽生社長ですが、彼女の部下たちは姜子牙の治療の他にもジム・ライアン一号の追跡調査に血眼な筈です。現場で働いている人間にしてみれば、羽生グループは結構なブラック企業の可能性アリ。
5.良血
山田さん「競馬で云うところの種馬的な役が僕にふられまして」
何やら自嘲気味に語る山田さんですが、天才・冬弥と修羅王・九十九の二人を世に送りだした実績はサンデーサイレンス級の超良血種牡馬と評してよいでしょう。DNAバンクというものが注目されている昨今、山田さんの『それ』は裏ルートで非常に人気が出そうな気がします。アスリート、少なくとも、格闘家の育成を志す者には魅力的な案件といってよいでしょう。しかし、よく考えたら、ケンシン・マエダがいなかったら、山田さんと静流さんは出会っていないんだよな……ということはケンシン・マエダは山田さんの仲人だったんだよ! ケンシン・マエダなかりせば、陸奥九十九も存在しなかった。やはり、ケンシン・マエダは九十九の形而上の父親といえなくもない(未練がましゃあ
6.条件
山田さん「冬弥はどうやら、僕に似すぎていたようです。陸奥にせよ、不破にせよ、その身の内に鬼とか修羅とか云ったモノを棲まわせていなくてはいけない」
ここが今回、一番ナルホドと思った場面。山田さん=九十九の父というのは前フリは結構あったにせよ、やはり、第壱門から見てきた人間には衝撃度が大きい。そこで今まで描いてきた山田さんのキャラ、とりわけ、
『僕は不破じゃない』
という台詞をもって、冬弥と結びつける=九十九の父親とする。綺麗に補強したと思います。上記の台詞は九十九が不破を斃した=不破が存在する意義がなくなったという意味だと思っていたのですが、自分の中には修羅が棲んでいないという意味でしたか。この台詞の時の山田さんの表情が存外哀しげで胸に響いた。やはり、不破を継げなかったというのは山田さんにも無念であったようです。次の頁で九十九を『あんなモノを棲まわせているというのに、意外と悩んだり迷ったりするのが信じられません』と、自分にはないモノを持っている相手への羨望を漏らしていることからも判るように、山田さんも最強を志したことがあったのでしょう。あれほどのモノを持っていて、何を悩むことがあるのかという怒りでもあるように思えました。
7.不是
羽生つばさ「じゃあ、最後に一仕事お願いするわ」
山田さん「断ります」
あ、断るんだ。父親越えの戦い、私も期待したんですけれどもねぇ。ここまで理詰めで説明されちゃしゃーないか。羽生社長と同じく、諦めることにします。実際、ここで海堂と片山という名前が出た以上、次の展開は両名がメインと考えたほうがよさそうですしね。永遠のチャレンジャーであった九十九が王者として、挑戦者を迎え撃つという構図になりますか。しかし、
山田さん「僕は少しくらいなら、エグイ事もできますが」
ルゥ・ジァの拠点で二桁の相手を血祭りにあげたのは少しくらいですか。そうですか。これにはルゥ・ズ・ミィンもあの世で苦笑い。
8.菩薩
山田さん「たしか今日も会場に来てましたよ」
山田さん、目がよ過ぎます。どう見ても二階席にいた片山を認識していたとは……やっぱり、九十九と戦れんじゃね? いい勝負できますよ、山田さん。それは兎も角、これで件の美形キャラが片山という確証が取れました。しかし、会場をあとにする片山が意味ありげに笑っていたのが気になる。どうも、挑戦者っぽい雰囲気。私の予想に反して、海堂との決着はついていないっぽいですね。まぁ、私にとっては笑みよりも先に臨席にいた女性は片山の連れでも何でもなかったことのほうが地味にショックなんですが。
9.継続
谷山編集長「今回はまだ……終わっていない……よなぁ、陸奥」
一番ホッとした台詞。要するに、
ということでしょう。第壱門のトラウマを抱えている古参の読者の多くは、戦いに一区切りがつくと同時に同じことが起こるんじゃないかとハラハラしていたと思いますが(先月号の巻末コメントも意味ありげでしたし)、今回はまだまだ続けるよ! という川原センセからのメッセージでしょう。でも、無理はしないでね。
次回から新展開! ラストページに描かれた九十九の帰還を誰よりも待っていた挑戦者とは勿論、
陣雷浩一「海堂かと思ったか! 俺だよ!」
こういう展開になったら、ある意味で凄い。でも、次号からいきなり海堂戦とかはあり得ないので、日本に指導員として来日しているイグナシオか、或いは拳将あたりが組手でもしてくれるんじゃないかと。
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